110. マルコ・ポーロに学ぶ

今週、ローレンス・バーグリン(Laurence Bergreen)著の「マルコ・ポーロ」Marco Polo(2007年刊)を読み終えた。 今月プリンストン図書館を訪れた際、中古本2ドルで手にした本である。 恥ずかしい事に、東方見聞録の著者としてぐらいしかマルコ・ポーロの事を知らなかった。

ジンギス・カンGenghis Khanが興したモンゴル帝国のパクス・モンゴリアPax Mongoliaの最盛期首長のクブライ汗Kublai Khanに17年間仕えたマルコ・ポーロの口述記録を元に、モンゴル年史・中国年史・ビザンチン年史等の史料と比較しながら描かれていて非常にエンジョイした。

13世紀後半から14世紀までの短命であったパクス・モンゴリアであった。 マルコの父親ニコル・パウロと叔父マフィオ・パウロの二人がシルクロードを旅してカブライ汗に面会後、二回目の旅には当時17歳のマルコを同行させる。その後パウロ家族はマルコをカブライ汗に17年仕えた。 そして3人そろって後の故郷ベニスへの帰途の旅につく。 
ベニス貿易商人ポーロ家族3人を駆り立たせたパクス・モンゴリアの多文化スケールが浮かび上がる。 キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教を認め、それら宗教バックグランドを持つ非モンゴル族の外国人を要職につけたカブライ汗の包括インクルーシブな姿勢に驚く。 と同時に、巨大な地域を統括するには、他の方法は現実的ではないとの想像がつく。

当時の中世ヨーロッパに比較してのモンゴル帝国の先進性を、マルコ・ポーロの純な好奇心からの驚嘆を交えてビジュアルに描いていて、楽しく読んだ。 同時に、ロシア・ハンガリーに至る黒海沿岸の戦略的重要性も学んだ。 勿論、十字軍遠征後の東ローマ帝国やベニスとジェノア間の貿易覇権にかかわるライバリーも学んだ。

そもそも、「旅トラベル」という書物として書かれたものの、偶然が重なる。ベニスとジェノバとの抗争戦争にマルコはジェノアで監獄隔離された。 その際に、同じ捕虜であったベニスと同盟をもったピッザ人ラスティチェロRustichelloとの出会いがある。 時間を持て余し、監獄監視するジェノア人監視人達に自ら経験したシルクロードの旅やカブライ汗の話、今の北京であるカンブラックCambulac や, ザナデュXanaduの話、更にはインドやジャバへの旅を語り伝えているのをこのラウティチェッロが記述したのがオリジナルである。 手書きコピーにてユロッパ内で評判となった。 今残るのは100を超えるコピであるが、それぞれ口述記述が異なり、オリジナル版は検証できない。 しかし、ヨーロッパにて当時のパックス・モンゴリアを知る数少ない史料として価値がある。 後世の我々にそれの一部でも知れる機会があったのはラッキーですね。

たままた手にした中古本との出会いも偶然であるが、マルコ・ポーロ旅・人生と口述見聞録も偶然の歴史の贈り物ですね。 
多文化接点の世界の歴史を読む事は、時間を超える仮想旅行しているようで、いつもエンジョイします。

この中古本で知ったロレンス・バーグリーンの他書作を見つけ読む事にする。

真夏の読書は、時に現実から離れての眼、違った視点を与えてくれるエネルギー源ですね。

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