72. トンネルの先

NJ州に住んで早38年を超えた。ベル研究所やエジソンの発明を輩出した地として、またはアインシュタインを迎えたプリンストン大学を例に挙げるまでもなく、嘗ては技術革新発祥の地としての名声を博した土地である。ウェスト・オレンジにあるトーマス・エジソン工場跡の一部は現在国立歴史博物館として保存されている。そこには、ノーベル賞受賞者9名を輩出したAT&Tベル研究所や,今をときめくカリフォルニア州シリコン・バレーに見られるような今やグローバル・スタンダードとなった感がある、脱サイロで他部門・外部とのオープンな仕事環境の原型を見ることができ、誠に興味深い。エジソンはここで意識的にオープン仕事環境を構築し革新技術を生み出したと言われている。

最近、現在のニュージャージ州競争優位性を考える機会があった。最初に思いついたのは、NYシティーに隣接する地理的優位性であった。米国北東部の巨大な消費市場へのアクセス。グローバル市場やサプライ・チェーンへのアクセス優位性を持つ交通インフラを挙げた。

しかしながら、この根底が崩れる危険性がある。リーダーシップのビジョン欠落と、運用実行の欠如が、ニュージャージ州だけではなく、NYメトロ地区、さらには米国北東部に大きなマイナスの経済インパクトを与え、地区の競争優位性を潰しかねない状況が刻々と近づいている。

理由は ゲートウェイ・トンネルである。 レーマン・ショック後にオバマ政権発足し、経済復興政策の主要項目でインフラ投資プランを掲げた。 ハドソン川を挟んでNY州とNJ州を結ぶゲートウェイ・トンネルは、増大するNYシティーへのコミューターや、ワシントンDCとボストンを結ぶアムトラックの北東部鉄道幹線サービスへの本数増大等により、新しいトンネル・チューブが必要になってきていた。新チューブが完成しない限り、古くなる一方のトンネル・インフラの補修もままならぬところまで来ていた。連邦政府と経費を折半し、新しいトンネル建設が承認されていたのを、就任間際の当時のクリス・クリスティ知事が州負担が大きすぎるとの理由にて、それを却下してしまった。

10年前に予定通りに新トンネルを建設着工していたら、あと数年後に完成していたであろう。NYC労働市場の13%が、ニュージャージ州からのこのトンネルを利用する通勤者である。

今週、火曜日と木曜日の二日して、NJのわが町よりNJトランジットにてNYシティまで電車コミュートしてみて、NYペンステーションや、ニューワーク・ペンのターミナルの情けないインフラ・レベルと、利用者無視の不便さを痛いほど感じた。

リーダーが描くビジョンの明確さと、それを間違いなくコミュニケートしてステーク・ホールダーからの支持を得て、素早く実行に移し、確実に最後までフォローアップできるかどうかは、何時の世でも、どんな環境であろうとも、本当に大事であると痛感しました。

トンネルの先を見通し、光を求めて行動を迅速に起こすが、リーダーに求められる。

 

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