7/28/17付けNYタイムズにユーナイテッド航空のオーヴァー・ブック顧客強制排斥事件後のPR対応、UX指向への経営焦点変化と第2四半期業績が好調で事件のインパクト無しとの内容の記事があり、興味深く読んだ。と言うのも、記事が好意的であったからである。
約4ヶ月前の4/9/17、シカゴ発ルイビル行きUA3411便で起きたこの事件はまだ記憶に新しい。東洋系米国人医師がオーヴァー・ブックされた座席を譲るのを拒否したため、セキュリティに暴力にて引き摺り下ろされ、歯を割られ肋骨骨折させられた事件である。この様子を同乗していた他の旅行客がスマート・ホーンでビデオを撮りユー・チューブにアップロードし、ソーシャル・メディアで取り上げられボイコット運動が起こった。暴力・乗客サービス・過剰ブッキング・人種差別・事件後の対応不備等、どれをとっても悪材料は揃っていた。結果、CEOのオスカー・ムニョスは上院議会の委員会にて公開聴衆され槍玉にあげられ、ほぼ決定していた取締会議長の座を棒に振ることになった。経営危機管理のケース・スタディとして必ずやビジネス・スクールで近い将来間違いなく取り上げられると思う。
明らかに状況はUAにマイナスに働き、4-6月の第2四半期業績は悪化すると予想されていた。しかし業績はブッキング率・離陸遅延率・顧客満足率等、どのマトリックスをとってもポジティブであり売上高、営業利益にて前年同時期比で上昇した。
好意的な記事の説明は、UAは決して早急処置をとったとも思われないが, 「決して顧客を無視したこの事件を二度と繰り返さない」ことを経営陣が明言し、従業員と汚名挽回のためオープンに現場からのアドバイスを受け入れ迅速に企業文化を変えていく決意をしたとある。どの企業もこのような事件の後は言葉では綺麗事を並べるのが常で信じられるものでもない。記事によれば、UA経営はUXのポジティブ改善を経営焦点に据え直し、シニア経営者の報酬をUX上昇指標にリンクするように変更したとある。さらには、現場スタッフからの意見を取り入れた、オーバー・ブックによる座席譲与の際の代償は業界でトップの$10,000と設置した。更に、目的地までのダイレクト代替航空機がアレンジできない場合は最寄り空港から陸路のトランスポーテーション代を支払う等の対応を明記。ラゲッジ損失時には明細不問にて一律高額弁償代を払う等、顧客への対応を第一として対応したようである。
それにしても、映像によるネガティブな印象を払い退けるのは至難の技と思われるものの、ラッキーだったのは競合航空会社も似たような顧客無視のひどい顧客サービス事件が次々と起こり、業界全般に対する消費者センシティビティの麻痺があると記事は述べている。
ただ、この記事の記者は最近の米国内線のフライトを選ぶ際、オプションと価格のメリットを選択理由にあげ、更にはフライト・サービス経験もサム・アップであったとポジティブな消費者体験であったと、結論付けた。
UAが本当に危機を脱し本来の顧客満足のUXを大幅に上昇させたのかは、残念ながら小生経験できるチャンスがまだないが、危機を契機に業績回復と顧客価値回帰戦略シフトが本物か、UAを注視してみようと思う。
危機対応の基本鉄則の第一は、即経営リーダーが全面にでてタイムリ対応する事。第二は、なぜ事故事件が起きたかを明快に説明。 第三に、二度と同様な事故を起こさぬ公言とメディア・顧客が理解できる施策をタイムリに説明。最後に、この全てを経営トップが誠意を持ってプライオリティとして取り組む事。
何故、個人も組織も、事故や大病になってはじめて、何が一番大切なのか学ぶらしい。真意にて誠意を込めて顧客に満足を与える事。気がついた時には遅いケースがほとんどですね。顧客UX満足度に注視する事が一番大事です。よく心置きたいものです。
あなたの組織には顧客UX満足度を定点評価し即時改良する仕組みがありますか。
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